私の性的嗜好に多大なる影響を与えた文豪、
谷崎潤一郎が没後50年の節目を迎えたということなので、本記事では
私のまったく個人的な谷崎文学10選をご紹介します。
---------------------<ヤマオリ>---------------------
【注意】一部、ラストのネタバレを含んでいます。
少年 明治44年(1911)
縁日に集まった小学生の子供たち。男女入り混じっての無邪気な行動を続けるうち、少年は倒錯的なサドマゾ体験をする。
秘密 明治44年(1911)
退屈な日常生活から脱しようとする青年が女装趣味に目覚めるが、本物の女性には勝てないことに気づく。
創造 大正4年(1915)
自分の容姿に劣等感をもつ芸術家が、美男美女を養子に迎え入れ、その二人の縁談を結ぶことにより、完璧な子供を誕生させようとする。
富美子の足 大正8年(1919)
妾の健やかな素足に生きることの活力を見いだしている隠居。最後には妾の足に踏まれたまま絶命する。
「偐紫田舎源氏」(にせむらさきいなかげんじ)
天保13年(1842年)・刊/柳亭種彦・著/歌川国貞・絵
隠居は富美子にこの挿絵と同じポーズを取らせて、画家にその絵を描かせようとする。
痴人の愛 大正13年(1924)
平凡なサラリーマンが自由奔放な少女に弄ばれるうち、その倒錯的な関係の中にこそ、自分の生き甲斐があることを発見する。
映画「痴人の愛」/増村保造・監督/1967年度
ナオミを演じるのは安田道代。舞台となる時代背景を現代に移しているため、原作のイメージ通りというわけではない。
青塚氏の話 大正15年(1926)
ある映画女優の熱狂的ファンが、その女優の肉体を本物そっくりに模したゴム人形を製作する。
蓼喰ふ蟲 昭和3年(1928)
ある夫婦が、互いに求め合っている人間像の食い違いから離婚を考えるようになる。日本古来の母性型から女性主導の娼婦型への、女性像の転換についての物語。
春琴抄 昭和8年(1933)
盲目の令嬢・春琴に心惹かれている少年が、利己的な性格の彼女に叱責されながらも献身的に支えていくことに生き甲斐を見つける。
映画「春琴抄 お琴と佐助」/島津保次郎・監督/1935年度
映像化の多い春琴抄の、一番最初の劇場用映画化。田中絹代と高田浩吉が主演。春琴のツンデレ具合の再現度が高い。
鍵 昭和31年(1956)
ある中年夫婦が、暗黙のうちに互いの日記を取り交わす。それは、夫婦間の性欲についてを吐露している内容の、相手に読まれることを前提としたものだった。
瘋癲老人日記 昭和36年(1961)
長男の嫁の肉体美に活力を求めている老人が、仏足石から着想を得て、嫁の足型の墓石を造ろうと計画する。
映画「瘋癲老人日記」/木村恵吾・監督/1962年度
颯子を演じているのは若尾文子。原作のイメージとはミスマッチ?

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-<タニオリ>-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
あらためて、谷崎文学の醍醐味はどこにあるのかというのを申し上げると・・・
◆セクシャリティについての考究を深めているところ
◆女性が内在している「美」についてを、ユングの元型的な観点(浄瑠璃人形を元型とする思想)から考察しているところ
◆性欲によって振り回される人間たちの、普遍的な喜劇性を描いているところ
◆父権主義が根付いている時代にも関わらず、男女逆転の倒錯的関係を主題にしているところ
・・・・などが挙げられます。
とくに最後の項目が重要であり、当時の読者たちは大きな衝撃を受けたとのこと。今日における、女性上位型の男女関係を真っ先に打ち出した先見性。そこに、私は強く惹かれるのです。
昔の人の理想とする美人は、容易に個性をあらはさない、慎しみ深い女であつたのに違ひないから、此の人形でいゝ訳なので、此れ以上に特徴があつては寧ろ妨げになるかも知れない。昔の人は小春も梅川も三勝もおしゆんも皆同じ顔に考へてゐたかも知れない。つまり此の人形の小春こそ日本人の伝統の中にある永遠女性のおもかげではないのか。 「蓼食う虫」より引用 |
テーマ : アダルト総合
ジャンル : アダルト